北海道電力の老朽火力休廃止方針と供給力確保の行方

北海道電力および北海道パワーエンジニアリングは、2026年10月2日、北海道内の火力発電設備である苫小牧発電所1号機、苫小牧共同火力発電所3号機、および音別発電所1・2号機について、2030年3月末をもって休止または廃止すると発表しました。

高度経済成長期から半世紀にわたり北海道の電力供給を底支えしてきた大型電源の退場は、地域のエネルギー供給構造にとって大きな節目となります。一方で、全国的に電力需給のひっ迫や供給力不足が懸念される中、これらの発電所を予備電源や容量市場の補完オークションで活用する方法も考えられます。

本記事では、北海道電力の公式発表内容を整理するとともに、既存制度を活用した供給力維持の可能性と課題について詳しく解説します。

高度経済成長期を支えた高経年火力たちの退場

今回休止・廃止の対象となったのは、いずれも運転開始から半世紀近くが経過した高経年火力発電設備です。

高度経済成長期の急速な電力需要の増加に対応するため、1970年代に相次いで運転を開始したこれらの施設は、長年にわたり地域の産業や生活を支え続けてきました。しかし、設備の経年化が著しく進んでいることから、2030年3月末という期限を定めた休止・廃止の断行に至りました。

今回対象となった各発電所の概要とスケジュールは以下の通りです。

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発電所・号機所有者定格出力主要燃料運転開始時期経過年数(2026年9月時点)2030年3月末の対応
苫小牧発電所 1号機北海道電力250,000 kW重原油・天然ガス1973年11月52年11ヵ月休止
苫小牧共同火力発電所 3号機北海道パワーエンジニアリング250,000 kW重油1974年4月52年6ヵ月休止
音別発電所 1・2号機北海道電力148,000 kW(合計)軽油1978年5月48年5ヵ月廃止

苫小牧エリアの2基(計500,000 kW)が「休止」とされる一方で、釧路市音別町に位置する音別発電所1・2号機は「廃止」となっています。音別発電所は2018年9月に発生した胆振東部地震の影響により、2019年2月に予定していた廃止時期を延期した経緯があります。

設備老朽化の壁と供給力不足の板挟み

高経年火力の維持には、深刻な技術的・経済的ハードルが存在します。運転開始から50年を超えると、主要機器の劣化による突然のトラブルリスクが高まるだけでなく、交換用部品の調達難や修繕費の大幅な増大が避けられません。

一方で、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う調整力の必要性や、厳冬期における北海道の電力需要を考慮すると、ベースロードおよびピーク対応電源の退出は供給予備率の低下に直結します。

特に北海道エリアは本州との連系線(北本連系線)の容量に制限があるため、域内での供給力確保が極めて重要です。このため、「休止」にとどまる電源については、万が一の需給ひっ迫時に備えたバックアップとしての再活用策が議論の対象となります。

休止火力は「予備電源」「補完オークション」で復活できるか?

高経年火力発電所(老朽化・採算悪化)
通常の市場環境なら…
そのまま「廃止」へ
❌ 厳冬期などの
電力需給ひっ迫リスク増大
今回の制度活用ルート
予備電源 / 補完オークション
💰 維持費・固定費の補填
(落札・要件適合時)
「休止」状態で設備を維持
⭕ 非常時のバックアップ電源として待機

全国的な供給力不足に対応するため、電力広域的運営推進機関や経済産業省は、休止火力を維持・活用するための制度設計を進めています。代表的な仕組みが「予備電源制度」と「補完オークション」です。

1. 予備電源制度

予備電源制度は、平常時の市場取引からは脱落して休止状態に入るものの、大規模災害や極端な需給ひっ迫時にkW公募等の立ち上げプロセスを経て立ち上げられる電源を維持する制度です。

  • 制度改善の動き: 予備電源制度は2024年に創設され、今年度に3回目の募集を実施しています。近年、目安価格の増額や経年改修費の織り込みについてガイドラインの見直しが進んでおり、制度改善が進められています。現在、電力広域的運営推進機関や国の委員会で議論が進められていますが、後述する補完オークションと予備電源制度の統合について検討が進められています。

2. 補完オークション(容量市場)

補完オークションは、採算悪化や老朽化で休廃止に向かう高経年火力発電所を、実需給の1〜3年前に固定費(実費補填ベース)を手当てして前もって確保する仕組みです。現在、電力広域的運営推進機関や国の委員会で議論が進められています。

  • 要件との適合性: 今後の制度設計次第ではありますが、補完オークションは主に送電端出力10万kW以上の電源が対象となるため、定格出力25万kWの「苫小牧1号機」および「苫小牧共同3号機」は、制度上の対象となる可能性があります。事業者が補完オークションに応札し落札されれば、維持費の補填を受けつつ供給力として温存される道が開かれます。

まとめ:脱炭素と安定供給の過渡期における北海道の電力インフラ

今回休止が決まった苫小牧発電所1号機・苫小牧共同火力3号機(計50万kW)については、2030年の休止以降、国の補完オークションや予備電源制度の募集状況、および北海道エリアの需給バランスに応じて、非常時の「保険」として活用される選択肢が残されています。

脱炭素化に向けた再生可能エネルギーの導入と、極寒期を支える火力電源の維持という二重の課題に対し、既存制度の柔軟な運用と新技術へのスムーズな移行が今後ますます重要となるでしょう。2030年の休止に向けた今後の市場環境と北電の動向に注目が集まります。

複雑化する電力システムと「条文だけでは読めない」業界動向をサポートします

老朽火力の休廃止や予備電源制度、補完オークションなど、電力インフラを巡る制度や市場環境は複雑化しています。
国や事業者から公表される情報も、それぞれを個別に読むだけでは、制度同士のつながりや、それが自社の事業にどのような影響を与えるのかまで見通しにくい場合があります。
今回も、北海道電力が公表した火力発電所の「休止・廃止」という情報を、供給力確保を巡る制度動向とあわせて見ることで、休止電源の今後の位置づけという論点が見えてきました。


丸山電気管理事務所では、電気主任技術者としての現場実務と、電力会社での制度関連業務等の経験を踏まえ、「電気事業制度・業界動向サポート」を提供しています。
公表情報や制度動向を読み解き、それがお客様の事業や既存設備にどのような影響を与えるのか、事業判断に必要な論点を整理します。

制度を「解説する」にとどまらず、ビジネスで「使いこなす」ための支援をお探しの企業様は、ぜひ当事務所にご相談ください。

【参考・出典】

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