私たちの生活に欠かせない電気。その「将来の供給力」を確保するための新しい仕組みが動き出しています。2026年5月13日、「長期脱炭素電源オークション(応札年度:2025年度)」の結果が発表されました。同オークションは2023年度に創設され、今回で3回目となります。本稿では、今回の結果について押さえておくべき主要ポイントを解説します。
1. 「容量市場」と「長期脱炭素電源オークション」とは
通常、電気の取引は「使った量(kWh)」に対して行われますが、容量市場は「将来の供給力(kW)」を取引する市場です。
その中でも「長期脱炭素電源オークション」は、脱炭素電源への新規投資を促すための制度です。
発電事業者が安心して投資できるよう、原則20年間にわたって固定費水準の収入を保証し、中長期的な予見可能性を高めることを目的としています。
2. 今回の約定結果
今回のオークションでは、合計で 729.9万kW の供給力が落札されました。
- 「脱炭素電源(募集量 500万kW)」
- 約定容量:426.1万kW
- 内訳として、リチウムイオン蓄電池や揚水発電、脱炭素火力、原子力の安全対策投資などが含まれます。
- 「LNG専焼火力(募集量 約293万kW)」
- 約定容量:303.8万kW
特に注目すべきは、落札電源の「約97%が新設・リプレース等」である点です。これは、将来に向けて着実に新しい設備の導入が進んでいることを示しています。
3. 発電方式別の傾向
方式別の落札率を見ると、日本のエネルギー政策の意図が見えてきます。
- 「100%落札」 アンモニア混焼、水素専焼、バイオマス専焼、原子力(新設・リプレースおよび安全対策投資)
- 「競争が発生」 蓄電池(約46%)、揚水(約55%)、LNG専焼火力(約64%)などは、応札容量が募集を上回り、競争が行われました。
4. 消費者や事業者への影響
「発電事業者に20年も収入を保証したら、電気料金が上がるのでは?」と心配になるかもしれません。
しかし、この制度には「他市場収益の還付」という仕組みがあります。発電事業者が卸電力市場などで得た利益の約9割を後で還元することで、実質的な国民負担を抑える工夫がなされています。
今回の約定総額は年4,748億円ですが、還付を控除した後の試算では、過去3年平均ベースで「年3,420億円程度」になると見込まれています。
5. 落札電源一覧
落札電源一覧で、注目されるのは北海道電力の「泊発電所1号機(55.8万kW)」ではないでしょうか。
泊3号機は安全審査に合格したものの、防潮堤などの安全対策工事に時間を要しているため未だに再稼働できておりません。
その中で、今回1号機が落札されたことに驚いた方も多いと思います。私たちは、この投資が適切に行われ、本当に安全でクリーンな電力として戻ってくるのか、「ロードマップの公表」を注視していく必要があります。
6. まとめ
今回のオークション結果は、蓄電池や脱炭素火力、原子力の活用など、日本の「脱炭素化」と「電力の安定供給」を両立させるための具体的な一歩となります。
今後、落札された電源が順次運転を開始し、私たちの元へ安定してクリーンな電気が届けられるようになります。2050年のカーボンニュートラル実現に向けた、非常に重要な進捗と言えるでしょう。
(参考:電力広域的運営推進機関:容量市場 長期脱炭素電源オークション約定結果(応札年度:2025 年度)の公表について)

